近年はHDMIもすっかり普及して、レコーダーやゲーム機などあらゆる機器に採用されています。
HDMIはデジタル形式の音声と映像を同時に送信可能な、デジタル家電向けの通信規格です。
圧縮されていないデジタル音声と映像を1つの端子に流せるので、ケーブル類もすっきりし、かつ高品質なデータを伝送できます。
ケーブルの価格も手頃になりあっという間に普及していった印象です。
さて、私もよく利用しているHDMIですが、コスト削減・小型化のためか「HDMI端子しか出力端子がない」という機器もでてきました。ただ、特にプリメインアンプなどに接続したい場合、HDMI入力ができないものも少なくありません。これでは、前述のHDMI端子しか無い機器とアンプを繋げることができません。
これでは非常に勿体ない、なんとか「HDMI内の音声と映像を分ける」ことができないものか。
ということで探してきました!サンワダイレクトのHDMIセレクター「400-SW015」です。
これはHDMI内のデジタル音声と映像を分離、音声部分は光・同軸デジタルの出力が可能。また映像の著作権保護機能「HDCP」、そして3D映像にも対応しているという中々の代物です。ポチってしまったので今回はこの商品のレビューを書きたいと思います。
動機
私は昨年の丁度今頃、「Pioneer インテグレーテッドアンプ A-70」を購入しました。
▲Pioneer インテグレーテッドアンプ ハイレゾ音源対応 A-70 (amazon.co.jp)
A-70/A-50 | 2ch オーディオコンポーネントシリーズ | 単品コンポーネント | パイオニア株式会社
http://pioneer-audiovisual.com/components/pureaudio/a-70_a-50/
メインのパソコンからは「USB Bタイプ」のデジタル入力端子へと繋いています。
これでパソコンからの音声は問題なくアンプを通してヘッドフォンへと出力できています。
アナログ端子は多くありますが、残るデジタル入力端子は「COAXIAL(同軸デジタル)」のみ。
光デジタル端子(OPTICAL)はこのアンプにはないので何とか同軸で接続する必要があります。
これから音声を出力できる機器があればなるべくアンプへと繋ぎたい。しかし、最近はHDMIのみ備える機器もある。音声単体で出力できても、同軸デジタルでなければアンプに入らない。「OPTICAL(光デジタル)」しかなければ変換器が必要。それが多数となれば音声信号のセレクターも必要になってくる。ケーブル類も煩雑になってきそうだ。
ということで、最も簡単に、シンプルに配線できる方法として「HDMI内の音声と映像を分離する」方法はないか考えました。こうすれば、出力する機器からはHDMIケーブル1つのみ、分離器からはアンプへ繋ぐデジタル信号が出力されるので1本だけで済みます。配線も少なく簡潔です。
これに合致する商品を探しました。複数のHDMI入力を備え、同軸デジタル音声を単体で取り出してくれる機器。
そこで見つけたのは「400-SW015」という製品でした。というより、あまり類似品が無く選択肢が少なかった。
▲サンワダイレクト HDMIセレクター HDMI切替器 4入力×1出力 光、同軸デジタル出力付き 3D対応 リモコン付 400-SW015 (amazon.co.jp)
簡単な商品解説
HDMIセレクター(HDMI切替器・4入力×1出力・光、同軸デジタル出力付き)400-SW015の販売商品 |通販ならサンワダイレクト
http://direct.sanwa.co.jp/ItemPage/400-SW015
商品の詳細はサンワダイレクト公式サイトで書かれていますが、一応ここでも簡単に解説。
HDMI入力が4つ、出力は1つで切替器としての使い方もOK。3DやHDCPにも対応
まず、HDMI入力端子(Aタイプ)を4つ、HDMI出力端子(Aタイプ)を1つ備えています。
HDMI切替器としても利用可能で、切り替えはリコモンで操作します。自動切り替えはせず、すべて手動な点に注意。
出力する機器に反応して自動で切り替わるわけではありません。人によっては不便であると思うかもしれませんが、私の利用状況では逆に手動切替であったのは助かった部分です。機器を同時に操作していることも多いので、任意に出力したい機器をモニターに出せるのは都合が良かったです。
出力端子はHDMI端子(Aタイプ)が1つ。音声を分離できる機器ではありますが、このHDMI出力には映像も音声データも送られています。音声分離機能が必要なかったとしても、入力されたデータをスルーして出力できますので、通常のHDMIセレクターとしても利用できます。
映像部分は3D映像・フルハイビジョン(1080p)やWUXGAの高画質映像に対応。HDCP(High-bandwidth Digital Content Protection)に対応しているのでレコーダーなどの暗号化された映像も問題なく出力できるみたいです。
音声出力は「同軸デジタル」「光デジタル」「ステレオミニジャック」の3つ
気になる音声出力端子ですが「3.5mm ステレオミニジャック」「同軸デジタル」「光デジタル角形(Toslink)」の3つで出力できます。
「同軸」「光」だけでなくステレオジャックまで付いているのは中々すごいですね。つまり、D/Aコンバーターが搭載されていることになりますが、そこそこの品質を持っているようです。今のところ使う予定はありませんが、直接ヘッドフォンなどを刺せるのは面白いです。パソコン用モニターだとモニターにスピーカーが付いていないことも多いので、そういった場合に使用できるでしょう。(リモコンで5.1chに設定すると音声スルーアウトが可能になるみたいです)
音声は「2ch」「5.1ch」が切り替えられます(変換機能はありません)。DTS Digital、Dolby Digital(DTS-HD、Dolby True HD)に対応。光デジタル、同軸デジタルでの音声出力は「192k/24bit」まで対応しています。ハイレゾ音声もばっちりです。
ハイレゾ音声の再生について注意点
コメントよりご指摘いただきました。情報ありがとうございます。
今回はパソコンとプレイステーション3(PS3)を本製品に接続してモニターへ出力することを考えています。
通常、モニターへ出力する機器があった場合、DDC通信(Display Data Channel )と呼ばれる通信を用いて、モニター側の解像度などを調査し、適切な出力になるよう自動調整する機能が備わっています。その他、色深度や周波数、そして音声データ入力に関することも調査します。
ただ繋ぐだけですべて適切な出力をしてくれる、いわゆるプラグ・アンド・プレイが実現しているわけです。
ただ、今回のように "1つの装置を使って" 音声はプリメインアンプへ、映像はモニターへとなっている場合、このDDC通信により「モニターの方の仕様に合うよう」音声が出力される可能性があります。
今回は以上のような配線を目指しますが、このように配線すると以下の様な現象が起きます。コメントをそのまま引用いたします。(A-70は当方が利用しているプリメインアンプです。)
HDMI接続では、HDCP認証の他に、受け側機器とDDC通信を行い、受け側機器の仕様でHDMI出力される、これが大原則となります。
従って、書かれている接続図では、HDMI受け側機器は音声入力付モニターのみですから、モニターの音声仕様でHDMI出力され、それが同軸に分配されて A-70 に入力されることになります。
つまり、モニターの音声仕様の上限がCD品質ならば、ハイレゾ音源やBDを再生しても、CD品質まで落とされて A-70 に入力されることになります。
>>本記事のコメント「七氏 さん」より引用・提供
DDC通信により、折角パソコン側でハイレゾ音声を再生しても、モニター側が対応していない場合、こちらに合わせてCD音声まで落とされている可能性があるということです。
現在私が利用しているモニターのプロパティです。「HDCP」「チャンネル」「ビット深度」「サンプルレート」の対応状況が書かれています。このモニターでは「2チャンネル」「24bit」「48.0 kHz」の音声まで入力できるようです。よくハイレゾにある「96kHz/24bit」や「192kHz/24bit」には対応していないので、このモニターで音声出力する場合はこの部分で注意が必要です。
パソコンの方はUSB接続でアンプに出力しているので、今回のケースでは特に影響はなかったみたいですが、今後機器を増やす場合は留意したいと思います。
世の中には「EDIDエミュレータ」なる商品もあるようで、その商品にEDID(ディスプレイ情報)を記憶、DDC通信が定める内容(EDID)を強制的に変更させることができるようです。こうすればハイレゾ仕様のモニターであると認識させられるので問題が解決するようです。以下の商品をご紹介されました。
TMDS-EDID | EDID保持器(エミュレータ) - 切替器.net
http://www.kirikaeki.net/edid/emulator/tmdsedid/
中々一筋縄ではいきませんね。大変勉強になりました。
なお、PS3初期型では「BD固有仕様でDDC通信に関わらずハイレゾ出力」できるようです。
簡単な用語解説
このようなニッチな商品を求めている方には承知の事柄かもしれませんが、「どんな商品なのか」という興味でこのページを見ている方もいらっしゃるかもしれませんので簡単に用語解説をしてみます。わかっている方はスキップしてください。
HDMI
High-Definition Multimedia Interface(高精細度マルチメディアインターフェース) の略称。
映像と音声をデジタル信号で伝送する通信規格です。2002年12月に策定されました。
映像と音声のデジタル信号を同時に1本のケーブルで送ることができるのが最大の長所です。三色端子などが別途無くてもこれ一本あればレコーダーを使ってテレビで映画などを見ることができます。また、完全なデジタル伝送となっているので、理論上伝送中にデータが改変されることはなく劣化しません。
映像と音声がデジタル信号として同時に伝送されているので、私は「何とか分離できないか」と考えたのです。
同軸デジタル(COAXIAL)
S/PDIF(Sony Philips Digital InterFace、エスピーディーアイエフ)と呼ばれる、映像や音声をデジタル信号として転送するための規格があります。この規格の中で、アナログ音声端子と同一形状のRCA端子を用いたものを同軸デジタル音声端子(COAXIAL:コアキシャル)と呼びます。このような音楽用同軸ケーブルのインピーダンスは75Ωであることが慣例化しています。
後述する光デジタルもS/PDIF規格内のものなので、伝送されているデータ自体は同じ。
光デジタル(OPTICAL)
同じくS/PDIFの中で規格されている端子、光デジタル音声端子(OPTICAL:オプティカル)のことです。
ケーブルに光ファイバーを使うためOPTICAL(光)という名前が付いています。さらに光デジタル音声端子には、ヘッドフォン等よく利用される一般的なミニプラグと同じ形状の丸型コネクタ(光ミニプラグ)と、東芝が開発した四角形の角型コネクタ「TOSLINK(トスリンク)」があります。例えば、SONYの PlayStation には TOSLINK と書かれた端子が備わっていて、光デジタル信号を出力できるようになっています。(正確にはトスリンクはデバイス全体の総称。なので丸型端子のトスリンクもありますが、通常は角型。)
上記同軸デジタルと同じS/PDIF規格内のものなので、伝送されているデータ自体は同じ。
HDCP
「High-bandwidth Digital Content Protection system」の略称。いわゆるコピーガード。
映像再生機からモニターへ出力する際、デジタル信号を暗号化して不正にコピーされるのを防ぐための技術です。Intel社などが開発しました。HDMIやDVIなどのインターフェースに用いられています。これに対応した再生機器、ディスプレイなどを使用していないとHDCPによって保護されていコンテンツは再生できない可能性があります。
レビュー
箱には、「本体」「リモコン」「アダプタ」です。当たり前ですが、HDMI端子などのケーブルの類はありません。
追加のHDMIケーブルや音声ケーブル等は別途購入してください。
上がHDMIケーブル、下が同軸デジタルケーブル(COAXIAL)です。
同軸デジタルケーブルはオレンジ色が付いていることが目印ですね。(ブルーであることもあるみたいですが)
LEDライトがめちゃくちゃ明るい
ライトが付いている状態です。
Amazonや楽天などあらゆるレビューサイトで言われていたことなのですが「LEDライトが明るすぎる!」
昼間でも中々目に触りますし、夜に部屋のライトを消そうものならこの商品のLEDライトだけで足元が見えるくらい。
カメラで夜撮ってみました。
カメラの設定によってはいくらでも明るくできますが、なるべく見た目に近い状態に編集しました。
実際これくらい明るかったです。左はリモコンですが、その文字が見えるくらいです。
減光シールを貼るなど対策が必要になるかもしれません。私は目立たないところに置きました。
因みに、起動しているときはLEDのライトがなぜか「青紫」です。OFFにすると「赤」のライトが1つ点きます。
設置してみた
・右下のHDMIケーブルが「INPUT 1」で、パソコンから来ています。
・左下がHDMIケーブルが「INPUT 2」で、現在はPS3からきています。
・左上のHDMIケーブルが「OUTPUT」で、出力したいモニターへ繋いでいます。
・オレンジ色のケーブルが同軸デジタルケーブルです。これはアンプへ繋がっています。
▲現在はこんな感じに配線しています。
操作してみた
まず目的である「音声は分離されたか」ということですが、うまくいっているようです。
1つ懸念していた「分離する際に遅延は無いか」ということですが、こちらも問題ありません。
普段は音声がUSB出力のパソコンですが、テストのためHDMIから音声も出力してみます。映像は問題なくモニターへ出力されました。「400-SW015」によりHDMI内の音声が分離、アンプの方へもちゃんとデータがいっているようで、アンプに繋いでいるヘッドフォンから音が聴こえてきました。極端な音質の劣化もなさそうです。ノイズは入っていません。
PS3からも出力してみました。リモコンで「2」をセレクト。モニターの画面が切り替わり、PS3の画面となります。音声もアンプへ送られているようで、ちゃんとゲームの音が聴こえてきました。PS3で設定できるほとんどの音声出力設定にチェックを入れても大丈夫でした。遅延も感じられず、本来の目的としては大変満足な動作をしています。
(※因みに、PlayStation 3やPlayStation 4はOPTICAL端子(Toslink)なら付いていますので、変換器があれば当アンプに繋がりますが、今後色々機器を増やすとケーブルも煩雑になりますので、今回のようにHDMIから音声を分離しようという発想をしています。)
映像が切り替わるまで「5秒」ほど時間がかかりました。
私はそこまで気になる時間でもありませんが、気になる方はご留意ください。音声を分離する以上、通常のHDMI切替器よりは遅いと思います。
まとめ
目的は達成できたので大変満足しています。
今はパソコンとPS3だけですが、今後PS4も買いたいですし、Chromecastやその他の端末からHDMIで出力する場合は全部これに繋げてみたいと思います。ケーブル類も最小限になりますし、リモコンの操作1つで映像と音声が同時に切り換えできるのですから便利かと思います。
結構ニッチな要求かとは思いますが、こういった製品が欲しい方はぜひ。LEDライトが明るすぎますが、まあこれは何とかなるでしょう。
▼ 更新履歴
- :ハイレゾ音声再生の注意点について追記
- :初出