iTunesで取り込み済みの音楽を別の形式へ変換する方法

iTunesは皆さんもご存知、Appleが開発・提供している音楽管理ソフトです。
Appleの製品を持っていなくても音楽管理ソフトとして大変優秀なソフトなので、多くの人が利用しているかと思います。

前回の記事では、iTunesを使ってCDから音楽をパソコンへ取り込む方法を解説しました。

今回の記事は、iTunesを使ってすでに取り込み済みの音楽ファイルを別の形式へ変換(エンコード)する方法を紹介いたします。例えば、WAVファイルでインポートした音楽データをMP3ファイルへ変換することができます。また、iTunes以外のソフトで取り込んだ音楽ファイルも変換できます。

iTunesを使ってエンコードする。
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※現時点での最新のiTunes「バージョン 12.4.3.1」にて解説しています。OSはWindowsです。

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iTunesが変換できるファイル形式について

まず、ファイル形式についてお話します。

パソコンで扱うために音楽もデジタル処理しなくてはいけません。音楽もデータとして扱う必要があります。
音楽をデータとして扱う際、用途によって様々なデジタル処理方法が考えだされました。それがファイル形式です。

それぞれのファイル形式には特徴があります。用途にあったファイル形式を利用できれば、より上手に音楽を管理できるようになります。

また、ある音楽ファイルの形式を別のファイル形式に変換することもできます。エンコード(Encode)とも呼ばれ、iTunesはインポートしたファイルのエンコード機能も持っています。例えば、Appleロスレス形式の音楽ファイルをMP3ファイルへエンコードすることができます。このエンコード機能を持ったプログラムを「エンコーダー(Encoder)」といいます。

iTunesがエンコードできる形式

iTunesでは下記の5つのファイル形式へエンコード可能です。それぞれの特徴も簡単に書いておきます。

AAC
(非可逆圧縮)
iTunes初期設定。MP3の改良版として開発されました。iTunesでは最高320kbpsまでビットレートを上げられます。非可逆圧縮なのでCDデータを一部カットします。しかし、MP3よりカットの仕方が上手なので容量はMP3と同等に圧縮できて、かつ比較してAACの方が高音質になっているようです。
AIFF
(無圧縮)
WAVと同じく無圧縮フォーマットです。Windowsの無圧縮がWAVに対して、Mac標準の無圧縮フォーマットがこのAIFFです。容量が大きくなりますが、代わりにCDのデータをそのまま記録できます。WAVと比較して、iTunesによるタグ編集をサポートしています。ただし、Windowsで扱う場合はAIFFだと若干汎用性に劣ります。
Apple ロスレス
(可逆圧縮)
アップルが開発したロスレスフォーマット(可逆圧縮)です。ALACとも言われます。昔はiTunesやiPodなどアップルの製品でないと再生できなかったのですが、2011年10月よりオープンソース化して仕様が公開されたたため、Appleの製品以外でも再生ができるようになってきています。可逆圧縮形式なので、音質の劣化なくデータも抑えることができます。タグ付けもサポートしています。
MP3
(非可逆圧縮)
言わずと知れた非可逆圧縮フォーマット。音質的には劣化が発生していますが、高レートならばその差が分からないほど。汎用性はどの非可逆フォーマットより優れています。どんなソフトウェア、ハードウェアでも恐らく再生できるでしょう。圧縮率も高く非常に使いやすいフォーマットです。
WAV
(無圧縮)
Windows標準の無圧縮フォーマット。CDから音楽データをそのまま取り込むため音質の劣化はありません。ただし、iTunesではWAVタグの表示・編集はサポートされていないので注意。(iTunesのライブラリにのみ反映されます。)

可逆圧縮と非可逆圧縮

音楽データの圧縮方法には主に2種類あります。

可逆圧縮

可逆圧縮は、圧縮しても元の無圧縮状態(iTunesではWAV、AIFFのこと)の音楽データに完全な状態で復元できる圧縮方法のことを指します。iTunesでは「Apple ロスレス」がこれに当たります。圧縮率はあまり高くできないのでMP3などよりデータ容量は大きくなりますが、CD音質のまま、かつ無圧縮状態のデータよりはデータ容量を節約できる便利な圧縮方法です。

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非可逆圧縮

対して非可逆圧縮は、一度圧縮してしまうと圧縮前のデータに戻すことができない圧縮方法になります。iTunesでは「MP3」「AAC」がこれに当たります。圧縮する際にデータの一部をカットすることで驚異的な圧縮率を実現しています。無圧縮状態のファイルより1/10以下の容量にすることも可能です。代わりに、データをそぎ落としているので、元のCD音質のデータに戻すことはできず、音質の劣化が必然的に起こります。

非可逆圧縮形式から無圧縮形式へ戻しても音質は戻らない

非可逆圧縮であるMP3形式やAAC形式は、圧縮の際にデータをカットしています。このカットされたデータは完全に削除されているので、例えばMP3から無圧縮のWAVに変換し直したところで音質がもとに戻るなんてことは絶対にありません。「非可逆」というのはそういうことなので勘違いしないよう注意してください。

音楽データについて

音楽形式やビットレートなどの考え方を書いた記事です。よくわからないという方は事前に読んでいただければと思います。

動画・音声データの質に関係する要素について

動画・音声の規格について ~コーデック・コンテナ~

高音質で音楽を聴くため可逆圧縮音源について学ぼう

不可逆圧縮音源の音声波形を見て性質を理解する

iTunes初期の取り込み設定(エンコード設定)では「iTunes Plus」という設定になっていて、「AACエンコーダ」を使用した「128kbps(モノラル)/256kbps(ステレオ),44100Hz,VBR」になっていると思います。

AACやMP3などの非可逆圧縮形式では、元のCDに録音されているデータを切り落として保存してしまいます。
その代わり、データ容量を圧倒的に小さくできるので容量に制限があるiPodなどで保存する場合は非可逆圧縮も有効です。

ただ、パソコンオーディオを極めたい方には音質も大事、データがカットされるのは気に入らないでしょう。その場合はALACなどの可逆圧縮形式で保存しデータの劣化を抑えることが有効です。可逆圧縮も信用ならん!というのならばWAVやAIFFなどの無圧縮形式がよろしいでしょう。

このように、用途によって設定が変えられるようになれば無駄もなくより満足できると思います。

iTunesライブラリ内の音楽ファイルを変換する

この記事で色々書く前に公式ヘルプのリンクを載せておきます。

それではiTunesを使って、すでにインポートされたライブラリ内の音楽を変換(エンコード)してみましょう。

  1. iTunesを起動します。

    まずはエンコード設定をします。右上のメニューにある「編集」→「設定」を選択します。

    設定
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  2. 「一般」タブから「インポート設定」を選択します。

    インポート設定
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  3. ここでエンコード設定をします。インポート設定となっていますが、インポート以外の部分でもこのエンコード設定が優先されます。

    エンコード設定
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    Encoder設定

    ビットレート / サンプルレート / チャンネル の設定

    「AAC」「MP3」の場合は「ビットレート」「サンプルレート」「チャンネル」の設定ができます。
    「設定」の「カスタム」を選んでください。

    カスタム

    カスタム設定
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    MP3やAACなどの非可逆圧縮で最高音質を求めたいならばビットレートを「320kbps」にすればOKです。サンプルレートやチャンネルは基本初期値で大丈夫です。ほとんどのCDのサンプルレートは44,100 Hzでチャンネルは2chステレオとなっています。

    弄るならばビットレートを弄ります。値が大きくなるほど音質が良くなりますが容量も大きくなります。逆に小さくすると音質が犠牲になりますが容量が少なくなります。

    ビットレート

    この分野でよく耳にするビットレート【Bitrate】とは、1秒間当たりに転送されるデータ容量を示す単位です。データ量の単位は「ビット【bit】」を使いますので、「ビット毎秒【bit per second:bps】」とも呼びます。この値が大きければ大きいほど、より多くの情報量を転送できることになります。音楽で言えば、音質の改善に繋がります。

    読み方ですが、例えば「320kbps」だと、「320 キロ ビット パー セコンド」または「320 キロ ビット毎秒」と読みます。因みに、「Bps」と大文字にすると「バイト パー セコンド」「バイト毎秒」となり意味が変わってしまうので、小文字を使うのが一般的です。

    iTunesでは、「MP3」だと「16kbps ~ 320kbps」、「AAC」だと「64kbps ~ 320kbps」が指定できます。因みに、通常の音楽CDは「1411kbps」です。WAV形式、AIFF形式で取り込むとこちらになります。

    可変ビットレート(VBR)

    可変ビットレート【Variable Bitrate】とは、音声データが少なくなる場面(音がなくなったり小さくなったりする場面)ではビットレートの値を下げ、多くのデータを必要とする場面ではビットレートの値を上げることで効率よく圧縮する方法です。ビットレート値が一定でなく、状況に応じて可変させる方式です。因みに、ビットレートが常に一定なデータを固定ビットレート【Constant Bitrate:CBR】といい、チェックを外すとこちらで圧縮されます。一般的にVBRにチェックを入れると効率的な圧縮ができることで、同容量のCBRより品質がよくなります。

    High Efficiencyエンコーディング

    AACには「High Efficiencyエンコーディング」というチェックも付けられます。通常「HE-AAC」と呼ばれます。低ビットレート(64kbpsなど)に最適化された圧縮方法です。低ビットレートでの取り込みを考えている場合はこのHE-AACで取り込むと通常のAACより音質が改善します。ただし、再生ソフトや機器がHE-AACに対応している必要があります。最近は対応ソフトも商品も多くなったので古いものでなければ多分大丈夫です。

    また、iTunesでの最高値は「80kbps」なので「192kbps」などの高レートでは使えないことに注意。あくまで低ビットレート用に最適化された圧縮方法です。

    音声用に最適化

    「音声用に最適化」は、英語教材などに最適化された圧縮方法を使用するために使います。いわゆるリスニング用です。このため、音楽CDからインポートする場合は通常必要ありません。逆に不自然な圧縮方法をされてしまい音質がより劣化しやすくなります。

    「WAV」「AIFF」「Apple ロスレス」はビットレートが固定になるので「サンプルレート」「サンプルサイズ(ビット)」「チャンネル」が変更できます。こちらは特に理由がなければ自動で問題ありません。基本的に無圧縮無劣化で取り込むのが目的なので色々弄ると逆に劣化することもあるからです。

    AIFFの設定画面

    設定が終わったらすべて「OK」にして設定を保存します。

  4. iTunesのライブラリ画面に戻って、エンコードしたい曲を選択状態にします。(複数選択も可)

    その後、左上のメニューより「ファイル」→「変換」→「◯◯バージョンを作成」を選択します。
    ◯◯の中ですが、先ほど設定したインポート設定の形式で変換されます。MP3で設定した場合は「MP3 バージョンを作成」となります。

    ◯◯バージョンを作成する(エンコードする)

  5. エンコードが開始されます。完了するとライブラリに新しく変換後の音楽データが追加されます。

    下の画像では「MP3バージョン」を作成してみたものです。無圧縮形式である「AIFF」から新しく「MPEGオーディオ(MP3のこと)」が作成されました。ビットレートは「320kbps」で設定しました。データサイズも「AIFF 44.9MB」から「MP3 10.2MB」までサイズダウンしています。

    右クリックメニューから「Windows エクスプローラで表示」を選択すると、その音楽ファイルデータがある場所が表示されます。

    エンコード後のライブラリ

指定したフォルダ内の音楽ファイルを一斉に変換する

先ほどはiTunesのライブラリに登録されている音楽データに対してエンコードをしました。

iTunesはこの方法以外にもう1つ、iTunesライブラリに登録していなくても指定したフォルダの中にある音楽データを一斉にエンコードできるようにもなっています。エンコード後は、エンコードした形式の音楽データがライブラリに登録されます。

  1. 先ほどと同じように「インポート設定」よりエンコード設定を済ませたら、キーボード上にある「Shift キー」を押しながら左上のメニューより「ファイル」→「変換」→「◯◯へ変換中」を選択します。◯◯は設定したエンコード後のファイル形式です。Shiftキーを押しながらでないと「変換」の表記が「◯◯へ変換中」へ変わりません。

    Shiftキーを押しながら「変換」を選択
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  2. すると、ファイルを指定するためのウィンドウが表示されます。
    エンコードしたい音楽ファイルをすべて選択状態にして「開く」を選択します。

    エンコードしたいファイルの選択

  3. 「開く」を選択すると、一括してエンコードが開始されます。

    エンコードが完了した音楽データからライブラリに登録されます。また、エンコード後のファイルはCDからインポートしたときと同じように指定したフォルダに振り分けられます。因みに、変換できるファイル形式はiTunesで読み込める形式に限られるようで、例えば可逆圧縮形式のFLACファイルなどはエンコードできません。

    一括エンコード中
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WAVタグについて

無圧縮形式であるAIFFはAppleが開発した形式なのでiTunesによるタグ付けのサポートがありますが、同じく無圧縮形式のWAVは、Microsoftの開発になっているためかiTunesではWAVタグの編集はサポートがされていません。

他のソフトでWAVファイルにタグを付けても、iTunesではそれらWAVタグを読み込むことはできず、アーティスト情報などはすべて真っさらになります。iTunes上で一度読み込ませて、iTunes上でタグ編集はできますが、そのタグ情報はiTunesのライブラリにのみ保存されており、本体であるWAVファイルにはタグ情報を追記しません。(逆に言うと、上書きもしないので本体に埋め込まれたタグ情報はそのまま)

このため、タグ入りWAVファイルをエンコードしようとしても、エンコード後のファイルにはタグ情報が反映できません。一度iTunes上でタグを入れ直したライブラリを作ってからエンコードするか、別のタグ入りWAVファイルをサポートしているソフトでAIFFなどの形式へ変換してからiTunesへ読み込ませないといけません。

AIFFやALAC、AAC、MP3などはタグ編集をサポートしているので、こちらは大丈夫ですが、WAVファイルだけは例外的な動作をするので注意してください。

WAVタグはサポート外
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▲iTunesはWAVタグ非対応のため、他のソフトで作ったタグ入りWAVファイルを読み込ませてもタグ情報を表示できない。iTunesで入力はできますが、WAVファイル本体には追加しない。iTunes上でタグを入力してライブラリに登録したものをエンコードすれば、エンコード後のファイルにもタグ情報がつきます。

まとめ

以上、iTunesを使って音楽ファイルをエンコードする方法を2つご紹介しました。

Appleのヘルプに載っている方法をそのまま記事にしただけですが、図解があったほうが分かりやすいかと思ったので書いてみました。一応、ファイル形式についてよくわからない人でも勉強しながらできるように書いてみましたがどうでしょうか。

iTunesは利用者も多いですし、1つ便利な方法を知っておいていざというときに活用できるとよいですね。

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